
某大手化粧品メーカー
マーケティング本部 ブランドマネジメント部
シニアブランドマネージャー A様
高機能・高価格帯(1万円台)のエイジングケアクリームにおいて、購入層が50代以上に偏っていることに課題を抱えていたA社。次なる成長に向けて30〜40代の新規顧客の開拓を狙うも、社内では「価格の高さがネックになっている」という見方が強く、低価格なミニサイズの開発も検討されていました。
そんな中、同社がパートナーに選んだのがTPC。安易な価格ハードルの引き下げではなく、ブランドの本質的な価値を守りながらLTVを向上させるTPCならではの「リサーチのプロ」「顧客のプロ」の視点とは。当時の狙いと成果について詳しくお話を伺いました。
調査概要
クライアントの相談(課題)
「高価格帯クリームの購入層が50代以上に偏っている。30〜40代の新規獲得に向けて、購入のネックを知りたい」
一般的な調査会社のアプローチ(陥りがちな罠)
価格調査を実施し、「価格が高い」という声が多いことから、お試し用の低価格ミニサイズを提案。一時的な新規獲得にはつながるものの、本品への移行やLTV向上には結び付きにくい。
TPCのアプローチ(真の解決策)
「価格ハードルを下げるのではなく、『高くても買う理由』を探るべき」と逆提案。美容医療への課金を検討している層の深い悩みを抽出し、「美容医療の手前となるお守りコスメ」という新たなポジショニングと、ターゲットに刺さる広告コピーを導き出しました。
50代以上に偏るコアファン。「30〜40代への拡張」の壁は、本当に“価格の高さ”なのか?
まず、今回の調査を実施することになった背景と、当時の課題について教えてください。
A様:私たちのブランドの強みは、1万円台の高機能エイジングケアクリームです。成分や効果への信頼が厚く、50代以上の多くのお客様にリピートしていただいています。
しかし、ブランドの長期的な成長を考えると、30〜40代のプレエイジングケア層(※年齢に応じた初期のケアを始める層)の新規獲得が急務でした。
ただ、いざその年代にアプローチしようとすると、社内からは「今の時代、30代に1万円のクリームは高すぎる」「プチプラや中価格帯の競合に勝てない」という声が根強く上がっていたんです。
そこで、まずは30〜40代に商品コンセプトを評価してもらい、購入の障壁(ネック)がどこにあるのかを明らかにするための調査を検討し始めました。
当初はどのような調査イメージをお持ちだったのでしょうか。
A様:一般的な価格受容性調査(PSM分析など)をイメージしていました。「いくらなら買いますか?」「いくらだと高いと感じますか?」というアンケートですね。
もし社内の予想通り「価格」が最大のネックであれば、本品を買ってもらうためのお試し用として、3千円〜4千円程度で購入できる「低価格なミニサイズ」を開発し、まずは認知と体験のハードルを下げるという施策を、半ば既定路線として考えていました。
「ミニサイズを作ってもLTVは上がらない」――本質を突いたTPCの逆提案
そこでいくつかの調査会社に相談される中で、TPCからの提案は他社とどう違ったのですか。
A様:他社さんは、私たちの「価格のネックを知りたい」という要望通りに、きれいな調査設計と見積もりを出してくれました。
しかし、TPCさんの提案は全く違っていました。開口一番、「ミニサイズを作って一時的に新規の数を集めても、本品の価格がネックになるなら、結局リピートせずにLTV(顧客生涯価値)は上がりませんよ」と言われたんです。これにはハッとさせられましたね。
さらに、「調べるべきは価格のハードルを下げる方法ではなく、30〜40代が『1万円を出してでもこのクリームを買いたい』と思う理由(心理的価値)であるはずです」と逆提案をいただきました。
単に要望を受け入れるだけでなく、ビジネスのゴール(LTV向上)を見据えた提案だったのですね。
A様:そうです。「顧客のプロ」として、私たちのビジネスモデルや化粧品業界の商慣習、そして何より今の30〜40代の生活者インサイトを深く理解しているからこその言葉だと感じました。
他社さんのやり方だと、「やっぱり価格が高いという結果が出たので、ミニサイズを売りましょう」という、想定内の報告で終わっていたと思います。
TPCさんなら、私たちの固定概念を覆すような、マーケティング戦略を根本から変えるデータを生み出してくれると確信し、依頼を決めました。
定量データで「投資余力のある層」を炙り出し、定性インタビューで「美容医療への焦り」を捉える
具体的な調査はどのように進んでいったのでしょうか。
A様:TPCさんの強みである「マクロ(定量)とミクロ(定性)の融合」が見事でした。まず広範な定量調査を行い、30〜40代のスキンケアに対する意識と、年代別の投資実態を網羅的に可視化しました。
そこで分かったのが、30〜40代の中でも「現在のスキンケアに限界を感じ始め、月々のコスメ代を高めるだけでなく、美容医療(ハイフやレーザーなど)への課金も真剣に検討、あるいは既に経験している層」が一定ボリューム存在するという事実でした。
私たちは一括りに「30〜40代」と捉えていましたが、TPCさんは定量データから、私たちの本品(1万円)を受け入れるポテンシャルの高い「高投資・高関心層」のボリュームゾーンを綺麗に特定してくれたのです。
その定量データをもとに、次のステップへ進んだわけですね。
A様:はい。次に行った定性調査(デプスインタビュー)が圧巻でした。先ほどの「美容医療検討層」にあたる女性たちに徹底的なヒアリングを行いました。
彼女たちの発言を掘り下げていくと、「SNSで綺麗な人を見るたびに焦る」「今のプチプラスキンケアのままでいいのか、毎晩鏡を見るのが怖い」といった、非常に深い心理的葛藤が見えてきたんです。
彼女たちにとって、1万円のクリームは単なる「保湿のための化粧品」ではなく、「老いへの恐怖を和らげるもの」であり、「美容医療に踏み切る前の、最後の砦(お守り)」のような価値を持っていることが浮かび上がってきました。
アンケートの選択肢を選ぶだけでは、決して出てこない生の声ですね。
A様:まさにそうです。
「高いから買わない」という表面的な数字の裏側に、実は「これさえ塗っていれば大丈夫と思える説得力や安心感(心理的ベネフィット)があれば、1万円でも喜んで投資する」という、本人たちも無自覚だった深いインサイトがあることを、TPCさんは見事に突き止めてくれました。
安易な値下げをストップ。ブランドの価値を守る「お守りコスメ」としての新ポジショニングを確立
今回の調査結果を受けて、社内のマーケティング施策はどのように変わりましたか。
A様:一番大きかったのは、社内で検討されていた「低価格ミニサイズの開発」という安易な施策にストップをかけられたことです。もしあれを実行していたら、ブランドのプレミアムなイメージを毀損し、利益率を圧迫するだけだったと思います。
TPCさんの調査結果という強固なエビデンスがあったおかげで、社内の意識を「価格を下げる」から「価値を伝える」方向へ一気にシフトさせることができました。
具体的には、30〜40代の美容医療検討層に向けた「美容医療の手前となる、夜の1分間の集中お守りケア」という新しいポジショニングを確立し、彼女たちの胸に突き刺さるような広告コピーやクリエイティブの開発につなげることができました。
結果として、本品の価格を維持したまま、狙っていた30〜40代の新規獲得数が大幅に伸長しています。
最後に、改めてTPCへの評価をお聞かせください。
A様:世の中に調査会社は数多くありますが、クライアントの表層的な相談(今回の例で言えば「価格調査をしたい」)をそのまま鵜呑みにして、言われた通りの調査票を作るだけの会社がほとんどです。
しかし、TPCさんは「リサーチのプロ」としての緻密な設計技術に加え、クライアントのビジネスの成功にどこまでもコミットする「顧客のプロ」としての視点を持っています。
この2つのプロの視点が掛け合わさるからこそ、私たちの迷いを断ち切り、明日からの具体的なアクションを導き出してくれるのだと思います。
今後も、マーケティングの重要な局面では必ずTPCさんに相談したいと考えています。