TPCマーケティングリサーチ株式会社

「市場が伸びている」だけでは参入できない。市場定着の条件を見極め、自社が勝てる独自ポジションを特定

2026.08.26
  • Health & Food

某大手食品メーカー
新規事業開発部 市場開発担当者 I様(仮名)
今後の成長を見据え、プラントベースフード(植物性代替食品)市場への参入を検討していた同社。社内では、市場全体の規模推移や主要プレイヤーのシェア、一般的な認知度・購買意向などを調べる、いわゆる「足元の市場データ集め」を想定していました。

しかし、単純に市場規模が伸びているからといって、自社が参入して成功できるとは限りません。

市場規模や購買意向といった数字だけでなく、定期購入者と離脱者の違いまで深掘りすることで、プラントベースフード市場が今後定着していくための条件と、自社が狙うべき独自のポジショニングを明らかにしました。

調査概要

クライアントの相談(課題)

「今後の成長を見据えて、プラントベースフード市場への参入を検討している。市場規模や主要プレイヤー、消費者の認知度・購買意向など、市場全体の状況を把握したい」

一般的な調査会社のアプローチ(陥りがちな罠)

市場規模の推移やカテゴリー別の成長率、主要プレイヤーのシェア、消費者の認知度・購入経験率・今後の購入意向などを調査し、市場が成長しているかどうかを確認する。

TPCのアプローチ(真の解決策)

「単なるブームとしての市場規模を追うだけでは、参入後に大火傷をする。一過性で終わらない『市場が定着する条件』と『自社が狙うべき特異なポジション』を炙り出すべき」と提案。

定量調査では、カテゴリー別の成長率や消費者の購入経験率・今後の購入意向をマクロ視点で網羅し、市場の天井(ポテンシャル)がどこにあるのかを特定。

その結果、「健康意識」だけではリピートせず、「調理の手軽さと罪悪感の払拭」が市場定着の真の鍵であることを突き止めました。

数字としての市場性だけではなく、自社が勝てる「独自のポジショニング」まで導き出すことで、参入判断や今後の商品開発につながる市場調査となりました。

「市場は伸びている」――それだけで参入を決めてよいのか

まず、今回の調査を実施することになった背景と、当時の課題について教えてください。

I様今後の事業の柱を増やしていく中で、新しい市場への参入を検討していました。その候補の一つとして注目していたのが、プラントベースフード市場です。健康志向の高まりやサステナビリティへの関心などを背景に、市場としても成長している印象がありました。
そこでまず、市場全体の規模がどのくらいなのか、今後どの程度伸びるのか、主要プレイヤーはどこなのかといった基本的な市場データを集めるところから始めようとしていました。社内では、認知度や購入経験率、今後の購入意向なども調べて、「市場として十分なポテンシャルがあるのか」を確認しようという話になっていました。

いわゆる「足元の市場データ集め」を想定されていたのですね。

I様そうです。
新規参入を検討する際には、まず市場規模や成長率を見るのが一般的だと思います。ただ、調べる前から少し気になっていたのが、「市場規模が伸びていることと、自社が参入して成功できることは同じではない」という点でした。
例えば、市場全体が拡大していても、実際には一部のユーザーしか継続購入していないのであれば、参入後に苦戦する可能性があります。また、すでに大手企業が参入している中で、後発の自社がどこで勝負するのかも決めなければなりません。
そのため、市場規模だけではなく、もう少し踏み込んだ調査が必要ではないかと考えていました。

「市場規模を追うだけでは、参入後に大火傷をする」――TPCからの提案

そこでTPCに相談された際、どのような提案があったのでしょうか。

I様まず市場規模や成長率を知りたいと相談しました。
もちろん、それらのデータも調査してもらったのですが、TPCさんからは、「単なるブームとしての市場規模を追うだけでは、参入後に大火傷をする」という話がありました。
そして、「一過性で終わらない『市場が定着する条件』と『自社が狙うべき特異なポジション』を炙り出すべき」と提案されたんです。
市場が大きいかどうかだけではなく、「なぜこの市場が今後も伸びるのか」「どんな人が継続して購入するのか」「逆に、なぜ一度買ってやめてしまうのか」まで見なければ、参入の判断材料としては不十分だということでした。

市場の成長性だけでなく、「定着するか」という視点を加えたのですね。

I様はい。
特に新規事業の場合、参入してから「思ったほどリピートされない」と分かっても、そこから方向転換するのは簡単ではありません。商品開発や販売体制など、ある程度の投資をした後では遅いですから。
そのため、参入前の段階で、市場のポテンシャルだけでなく、継続購入につながる条件や、競合と差別化できるポイントまで確認しておくことは重要だと感じました。

定量調査で「市場の天井」を把握し、定性調査で「定着する理由と離脱する理由」を比較

具体的な調査はどのように進んでいったのでしょうか。

I様まず定量調査で、プラントベースフード市場の全体像を把握しました。
カテゴリー別の成長率や、消費者の購入経験率、今後の購入意向などを幅広く調査して、市場の天井、つまりどこまで市場が広がる可能性があるのかを見ました。
単に「市場が伸びている」というだけではなく、現在どれくらいの人が購入していて、今後購入してみたい人がどれくらいいるのかを見ることで、市場のポテンシャルを具体的な数字で把握できました。これによって、参入を検討するうえでの市場規模について、社内でも共通認識を持ちやすくなりました。

その定量データをもとに、定性調査ではどのようなことを行ったのでしょうか。

I様定性調査では、定期的に購入している人と、一度購入したものの離脱してしまった人を比較しました。
特に、週に数回、定期的に購入しているヘビーユーザーについては、どういう生活をしていて、どんな場面でプラントベースフードを取り入れているのかを詳しく聞きました。
一方で、離脱層については、「なぜ一度は購入したのに、その後買わなくなったのか」を掘り下げました。味や価格に対する不満だけではなく、「健康には良さそうだけれど、毎日の食事として取り入れるのは面倒」「わざわざ選ぶ理由が分からない」といった、継続購入を妨げる要因も見えてきました。
定期購入者と離脱者を比較したことで、「市場がある」というだけでは分からない、継続購入の条件がかなり具体的に見えてきたと思います。

「健康に良い」だけではリピートしない――市場定着の鍵を発見

調査を通して、どのようなインサイトが得られましたか。

I様一番大きかったのは、「健康意識」だけではリピートにつながらないということでした。
私たちは当初、プラントベースフードを購入する人は、健康意識が高い人が中心だと考えていました。もちろん健康への関心は重要なのですが、それだけでは継続購入の理由にはなりません。
むしろ、継続している人を見ると、「調理が簡単で、忙しいときでも取り入れやすい」「健康を意識しながら食べられるので、食事に対する罪悪感が少ない」といった、日常生活の中で無理なく続けられることが重要でした。
そこで、「健康に良い食品」というだけではなく、「手軽に取り入れられて、罪悪感なく食べられる食品」という価値が、市場を定着させるうえで重要なのではないかという考え方に変わりました。

参入する場合の商品の方向性にも影響しそうですね。

I様市場規模や競合のシェアだけを見ていたら、「成長市場だから参入しよう」という結論になっていたかもしれません。
今回、定期購入者と離脱者の違いまで見たことで、「どのような価値を提供すれば継続してもらえるのか」を考えたうえで参入戦略を検討できるようになりました。特に、「調理の手軽さと罪悪感の払拭」という視点は、商品開発や訴求を考えるうえでも重要なヒントになりました。

「市場に参入する」から「自社が勝てる場所を選ぶ」へ――独自ポジショニングを明確化

今回の調査結果を受けて、社内の検討はどのように変わりましたか。

I様市場に参入するかどうかだけではなく、「参入するなら、どこで勝負するのか」という議論ができるようになったことが大きかったです。それまでは、市場規模や成長率、主要プレイヤーのシェアなどを見ながら、「市場として有望か」を判断しようとしていました。
今回の調査によって、ヘビーユーザーが何を評価しているのか、離脱者がどこでつまずいているのかが見えたことで、自社が狙うべきターゲットや提供価値についても具体的に考えられるようになりました。
単に「プラントベースフード市場に参入する」のではなく、競合とどのように差別化し、自社ならではの「独自のポジショニング」をどう作るかという方向に、議論が変わっていきました。

最後に、改めてTPCへの評価をお聞かせください。

I様今回の調査で良かったのは、こちらが想定していた「市場データを集める」というところで終わらなかったことです。
市場規模や成長率などの数字は、新規参入を検討するうえで当然必要です。ただ、それだけでは「市場が本当に定着するのか」「自社が参入した場合にどこで勝てるのか」までは判断できません。
TPCさんは、市場全体を定量的に捉えるだけでなく、定期購入者と離脱者の違いまで定性調査で掘り下げてくれました。その結果、数字としての市場性だけではなく、「市場が定着する条件」と「自社が狙うべき特異なポジション」まで考えられるようになりました。
新規市場への参入を検討する際には、市場規模だけを見るのではなく、「その市場で誰が継続して購入するのか」「なぜ離脱するのか」まで把握することが重要だと実感しました。今回の調査は、単なる市場規模の把握にとどまらず、今後の商品開発や参入戦略を考えるための土台となる、有意義な市場調査だったと思います。
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