TPCマーケティングリサーチ株式会社

「飲み忘れ」だけが原因ではなかった。患者のペイシェント・ジャーニーを可視化し、服薬継続を支える新たな患者支援へ

2026.08.25
  • Pharmaceuticals & Medical

某大手製薬メーカー
マーケティング本部 疾患領域担当 F様
慢性疾患の治療において、患者さんが途中で服薬をやめてしまう「アドヒアランス低下」に課題を抱えていたD社。社内データから「飲み忘れ」が服薬中断の主な理由であることは分かっていたものの、なぜ飲み忘れてしまうのか、なぜ治療を途中でやめてしまうのかという、さらに深い理由までは掴めていませんでした。

 

そこでTPCに相談したところ、「飲み忘れ」という表面的な理由だけで片付けるのではなく、患者さんの生活動線と心理の揺れ動きを「ペイシェント・ジャーニー」として捉えるというアプローチを提案されました。

 

定量調査で服薬実態と離脱が起きやすいタイミングを把握し、定性調査では患者・医師双方の認識を深掘り。その結果、単なる服薬リマインドでは解決できない、患者さんの疾患理解や医師とのコミュニケーションに関する根本課題が明らかになりました。
調査概要

クライアントの相談(課題)

「慢性疾患の治療において服薬継続率が課題となっている。社内データから『飲み忘れ』が主な理由であることは分かっているが、それ以上の深い理由を把握し、有効な対策につなげたい」

一般的な調査会社のアプローチ(陥りがちな罠)

患者さんに服薬状況や服薬中断の理由を尋ね、「飲み忘れ」「外出していた」「忙しかった」などの表面的な要因を整理。その結果をもとに、服薬リマインドアプリや通知など、服薬を忘れないための対策を導入する。

しかし、「なぜ飲み忘れるのか」「なぜ治療を続ける必要があると感じられなくなるのか」といった患者さんの生活背景や心理まで捉えなければ、服薬継続率の根本的な改善にはつながりにくい。

TPCのアプローチ(真の解決策)

「飲み忘れ」という表面的な理由で片付けず、患者さんの生活動線と心理の揺れ動きを「ペイシェント・ジャーニー」として可視化し、根本課題を捉える調査を提案。

定量調査では、治療フェーズごとの服薬継続率や、患者自身が認識している「薬をやめた理由(建前)」を把握し、離脱が起きやすい「魔の期間」を特定。

さらに定性調査では、患者・医師双方へのインタビューを通じて、「症状が良くなった=治った」という誤解や、「主治医に副作用の不安を言い出せない」という遠慮など、診察室では見えにくい患者さんのリアルな声を拾い上げました。

その結果、単なる服薬リマインドではなく、「疾患に対する正しい啓発」と「医師と患者のコミュニケーション支援」こそが重要であることが明らかになり、患者向け疾患教育パンフレットの改訂につなげました。

「飲み忘れ」が1位。でも、それだけでは服薬をやめる理由が分からない

まず、今回の調査を実施することになった背景と、当時の課題について教えてください。

F様慢性疾患の治療において、患者さんが途中で服薬をやめてしまう、いわゆるアドヒアランス低下が課題になっていました。社内で保有しているデータを見ると、服薬を中断した理由として「飲み忘れ」が1位になっていました。
もちろん、飲み忘れを減らすことは重要です。ただ、「飲み忘れ」が多いことは分かっていても、なぜ患者さんが飲み忘れてしまうのか、その背景までは分かっていませんでした。
例えば、単純に忙しくて忘れてしまうのか、それとも薬を飲む必要性を感じなくなっているのか。そこが分からないままでは、有効な対策を考えるのは難しいと感じていました。

当初は「飲み忘れ」を減らすことが対策の中心だったのでしょうか。

F様そうですね。
当初は、服薬を忘れないようにするためのリマインドツールなども検討していました。ただ、患者さんが薬を飲まなくなる理由が本当に「忘れている」だけなら、それで解決できると思います。
一方で、症状が良くなったことで「もう薬を飲まなくてもいいのではないか」と考えているのであれば、リマインドを増やしても根本的な解決にはなりません。
そこで、「飲み忘れ」という結果だけではなく、その前後で患者さんに何が起きているのかを詳しく把握する必要があると考え、調査を検討しました。

「飲み忘れ」で終わらせない――患者の生活と心理を捉えるTPCのアプローチ

そこでTPCに相談された際、どのような提案があったのでしょうか。

F様TPCさんからは、「飲み忘れ」という表面的な理由だけで調査を終わらせるのではなく、患者さんの生活動線と心理の揺れ動きを「ペイシェント・ジャーニー」として捉えてみてはどうかという提案がありました。
患者さんが治療を開始してから、症状が改善し、その後も服薬を継続する。その過程で、患者さんの生活や気持ちがどう変化していくのかを見るという考え方です。
これは、私たちがそれまで見ていた「服薬したか、しなかったか」というデータとは少し違う視点でした。
薬を飲んだかどうかだけではなく、「なぜそのタイミングで飲まなくなったのか」まで見ることで、服薬継続を妨げている本当の要因が見えてくるのではないかと考えました。

調査の視点そのものを変えたことがポイントだったのですね。

F様そうですね。
患者さんの服薬行動だけを切り取るのではなく、治療を続ける中での生活や心理まで含めて見ていくことで、より具体的な患者支援策につながるのではないかと思いました。
特に慢性疾患の場合、治療期間が長くなるので、患者さんの気持ちがずっと同じとは限りません。症状がつらい時期と、症状が落ち着いた時期では、薬に対する意識も変わります。
そうした変化を含めて患者さんを理解することが、今回の調査では重要だったと思います。

定量調査で「服薬継続の実態」を把握し、離脱が起きやすい「魔の期間」を特定

具体的な調査はどのように進んでいったのでしょうか。

F様まず定量調査で、患者さんの服薬実態を広く把握しました。治療フェーズごとの服薬継続率や、患者さん自身が認識している「薬をやめた理由」を確認していきました。
ここで重要だったのが、患者さんが回答する「薬をやめた理由」には、必ずしも本音だけが表れているわけではないということです。例えば、「飲み忘れた」「忙しかった」という回答の背景に、別の理由が隠れている可能性があります。
そうした点も含めてデータを分析することで、患者さんが離脱しやすい「魔の期間」を特定することができました。

定量調査で、服薬継続の全体像が見えてきたわけですね。

F様はい。
それまでは「飲み忘れが多い」ということだけを見ていましたが、治療のどの段階で服薬継続率が落ちるのかが分かると、対策を考えるポイントも変わってきます。
患者さん全体に一律で対策をするのではなく、特に離脱が起きやすいタイミングを意識して支援する必要があることが分かりました。

患者と医師、それぞれの「言えない・伝わらない」を定性調査で深掘り

その定量データをもとに、定性調査ではどのようなことを行ったのでしょうか。

F様次に、患者さんと医師の双方にインタビューを行いました。
ここで特に印象的だったのが、患者さんと医師の認識にギャップがあることでした。例えば患者さん側には、「症状が良くなった=治った」という認識があり、症状が落ち着くと薬を飲み続ける必要性を感じにくくなってしまうケースがありました。
また、「薬の副作用が気になる」という不安があっても、「主治医に言い出しにくい」「こんなことを聞いていいのか分からない」という遠慮から、そのまま服薬を続けたり、逆に自己判断でやめてしまったりするケースもありました。
こうした声は、診察室で医師から見えている患者さんの姿だけでは、なかなか把握できないものだと思います。

「飲み忘れ」の裏側に、患者さん自身も言語化していない心理があったのですね。

F様そうですね。
「飲み忘れました」という一言だけを見ると、単純に薬を飲むことを忘れたように思います。でも、その背景には、「症状が良くなったからもう大丈夫だと思った」「薬を飲み続ける意味が分からなくなった」「副作用が心配だけれど先生には聞きにくい」といった、いろいろな気持ちがありました。
定量調査だけでは分からなかった部分を、定性調査で具体的な言葉として拾い上げることができたのは大きかったです。
患者さんの生活動線と心理の揺れ動きを「ペイシェント・ジャーニー」として見ることで、服薬をやめるまでの過程をより具体的にイメージできるようになりました。

「服薬リマインド」から「正しい疾患理解とコミュニケーション支援」へ

今回の調査結果を受けて、患者支援の取り組みはどのように変わりましたか。

F様一番大きかったのは、服薬継続率を上げるために、単純に「薬を忘れずに飲んでもらう」ことだけを考えなくなったことです。もちろん服薬リマインドも一つの手段ですが、それだけでは解決できない患者さんがいることが分かりました。
「症状が良くなった=治った」という誤解があるのであれば、疾患について正しく理解してもらう必要があります。また、副作用などの不安を医師に相談できていないのであれば、医師と患者さんのコミュニケーションを支援することも重要です。
そこで、調査結果をもとに、患者さんに疾患や治療について正しく理解してもらうための患者向け疾患教育パンフレットの内容を見直しました。単に薬の飲み方を説明するのではなく、「なぜ治療を続ける必要があるのか」「不安や疑問があれば医師に相談してよい」ということが伝わるよう、内容を改訂しました。

最後に、改めてTPCへの評価をお聞かせください。

F様今回TPCさんに相談して良かったのは、「飲み忘れ」という分かりやすい理由だけで調査を終わらせなかったことです。
社内データを見る限り、「飲み忘れ」が1位という事実は分かっていました。ただ、その数字だけを見ていると、どうしても「忘れないための仕組みを作ろう」という方向に考えが進んでしまいます。
TPCさんは、そこから患者さんの生活や心理まで視点を広げて、「なぜ飲み忘れるのか」「なぜ治療を続けなくなるのか」をペイシェント・ジャーニーとして整理してくれました。定量調査で全体像を把握し、定性調査で患者さんと医師それぞれの認識を深掘りしたことで、これまで見えていなかった課題を具体的に捉えることができました。
結果として、単なる服薬リマインドではなく、「疾患に対する正しい啓発」と「医師と患者のコミュニケーション支援」という、より本質的な患者支援策を考えるきっかけになりました。調査結果を患者向け疾患教育パンフレットの改訂という具体的な施策にまでつなげられたことは、今回の調査で得られた大きな成果だったと思います。
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