リサーチャーに聞く!#151 『2025年 通販化粧品の市場分析調査』調査のポイント

2025.12.18
  • リサーチャーインタビュー
  • Beauty & Cosmetics
リサーチャーに聞く!#151 『2025年 通販化粧品の市場分析調査』調査のポイント

第151回は、2025年11月28日発刊の『2025年 通販化粧品の市場分析調査』です!
大手から中堅、新規参入企業まで幅広く分析し、商品展開、通販媒体、顧客サービス、SNS活用状況など多角的な視点から市場動向を整理。拡大を続ける通販化粧品市場における各社の最新戦略と今後の展望についてレポートした当レポートについて、弊社リサーチャーの武本美沙、吉岡由莉に調査のポイントをインタビューしました!

 

武本美沙 プロフィール

リサ・リューション事業部 リサーチグループ Beauty & Cosmetics

武本美沙

—Profile—

2023年に入社後、化粧品分野で市場・消費者調査を担当している。
直近では、「化粧品企業のR&D戦略」と「女性の頭皮・髪に関する意識・実態調査」を担当。
趣味はゲームと旅行先でご当地酒を買うこと。
SNSでバズった化粧品を購入し、使ってみるのが好き。

 

吉岡由莉 プロフィール

リサ・リューション事業部 リサーチグループ Beauty & Cosmetics
吉岡由莉

—Profile—

2024年に入社後、化粧品分野で市場・消費者調査を担当。
直近では、「頭髪化粧品の市場分析調査」や「ベースメイクの使用実態と今後のニーズ」に関する調査を担当している。
最近はヘアケアにはまっており、インバスからアウトバスまでさまざまなアイテムを試すのが日々の楽しみ。

 


―今回通販化粧品をテーマにした調査とのことですが、現在の通販化粧品市場の課題は何だと考えていますか?

武本現在の通販化粧品市場には、いくつか課題があると考えています。
まず1つ目は、ECモールの存在感が高まったことで、自社ECでの新規顧客獲得が難しくなってきている点です。
現在は、広告を見てすぐ自社サイトにアクセスするというよりも、まず最初にAmazonや楽天市場といったECモールに入り、その中で商品を探す消費行動が一般化しています。そのため、多くのメーカーが「公式サイトに人が来ない」という課題に直面しており、ECモールと自社ECの役割分担や、モール顧客のCRM化など、新しい導線設計が求められる状況になっています。

2つ目は、新規顧客獲得の効率が年々悪化していることです。
広告費の高騰や規制強化、競合増加の影響で、従来のように広告費を投下すれば獲得できる時代ではなくなっています。実際、多くの企業が広告宣伝費の適正化や費用対効果の厳格な改善に動いており、“いかに無駄なく新規を獲得し、既存顧客を育てていくか”が重要な課題になっているといえます。

 

―なるほど。ECモールの台頭や広告効率の低下といった課題があるのですね。
こうした課題に対して、主要各社はどのように対処しているのでしょうか?

武本各社とも、こうした課題に合わせて戦略を見直しており、特にECモールの活用を強化する動きが目立ちます。
まず、新規顧客との出会いはECモールでつくり、購入後にLINEやアプリへ誘導して自社のCRMに取り込む流れが一般化しつつあります。ECモールを「売上の場」ではなく「新規との出会いの場」と捉え、自社ECとは役割を分けて運用する企業が増えています。

具体例としては、オルビスの取り組みが分かりやすいケースです。
同社は外部ECモールで獲得した新規顧客に対し、購入後のフォローメールやモール内の導線を活用し、公式アプリやLINEへの登録を促しています。アプリ内では行動データ分析ツールを用いて、一人ひとりに合わせた情報を発信することで、継続利用につながる仕組みを強化しています。

また、広告効率の悪化に対しては、投資の最適化を進める動きが各社でみられます。
これまでの大量投下型広告から、既存顧客とのコミュニケーション強化やCRMデータを活用したセグメント配信へと軸足を移し、ブランドの世界観・コンテンツを通じた“質重視”の運用にシフトする傾向が強まっています。

DHCでは、会員データの一元管理を目的に大規模なIT投資を行い、コールセンター・直営店・通販を横断したOMO基盤の構築を進めています。これにより、チャネルごとに分断されがちな顧客情報を統合し、最適なコミュニケーションが取れる体制を整えています。

さらに、オンラインとオフラインを組み合わせたOMO戦略に取り組む企業も増えており、
例えば新日本製薬の「パーフェクトワン フォーカス」では、店舗展開やキャラクターコラボを起点に認知を広げ、店頭からAmazon定期便へとユーザーが流入する導線を構築しています。こうしたチャネル横断の導線設計は、継続利用の強化にもつながっています。

―なるほど!ECモールでの新規獲得から、自社での育成へつなぐ動きが一段と加速しているのですね。こうした動き以外にも、最近の通販化粧品市場で各社が注力しているポイントや、注目すべき動向はありますか?

武本はい。もうひとつ注目すべきポイントとして、AI活用の本格化が挙げられます。
最近では、AIがユーザーごとの行動パターンを学習し、最適なタイミング・最適なチャネルで情報を届けるパーソナライズ施策が大きく進化しています。LINEの配信内容を自動で出し分けたり、ECサイト上でその人に合わせた商品をレコメンドしたりと、“人力では難しいレベルの細やかな運用”が可能になりつつあります。企業はこれにより、無駄な接点を減らし、ユーザーが「欲しい」と思う瞬間に最適な情報を届けることができるようになりました。

例えば、Aiロボティクスではユーザーの閲覧履歴や購入傾向をAIが学習し、各ユーザーにとって最も反応が高いタイミングと訴求内容を自動で選定する仕組みを導入しています。これにより、同じキャンペーンでも、配信時間・文言・訴求軸をユーザーごとに変えられるようになり、コミュニケーションの精度が大幅に高まっています。

また、再春館製薬所でもAIを活用したパーソナライズ戦略が進んでいます。
コールセンターやオンライン相談の履歴、購入状況などをAIが統合して分析し、「いま必要としているサポート」や「次に求められる可能性が高い商品」を導き出すことで、フォロー提案の適切なタイミングを自動で判断しています。こうした取り組みが、一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを実現し、顧客満足度の向上に寄与しています。

 

―AIによって、一人ひとりに合わせたコミュニケーションが実現できるようになってきているのですね。AIでの個別対応が進む一方で、ブランドの見せ方にも変化が出てきているのでしょうか?

吉岡はい。AIでの個別対応が進む一方で、ブランドの見せ方を見直すリブランディングの動きも強まっています。
SNSやECモール、AIを活用したマーケティングが広がるなか、企業が原点に立ち返り、ブランドの世界観や価値の伝え方を整理し見直すケースが増えてきました。

その代表的な例が、DHCとドクターシーラボです。
DHCは経営体制の刷新を契機にパーパスとロゴを一新し、ブランドの世界観・機能性・体験価値といった“長く選ばれる理由”を重視する方向へシフトしています。従来の価格訴求だけではなく、企業としての価値をしっかり伝えるブランドづくりに力を入れています。

一方、ドクターシーラボは、“高機能ドクターズコスメ”としての訴求を一層強化する方向でブランドを再構築しています。新しいメッセージやデザインの刷新を通じて、専門性や信頼性をより明確に打ち出し、ブランドの世界観とストーリーを再整理している点が特徴です。

このように、デジタル施策が高度化する今だからこそ、単なる広告や販売施策にとどまらず、ブランドの世界観・ストーリー性・共感価値を磨き直す動きが重要性を増していると感じます。自社EC・SNS・ECモール・広告などタッチポイントが増える中、どこで触れても同じトーンでブランドが伝わるよう設計し直す企業の戦略が目立ちます。

 

―ここまで、市場の最新動向を分かりやすくお話しいただき、ありがとうございました!では、最後になりますが、読者の皆様に一言ありましたらお願いします。

吉岡本レポートは、弊社の化粧品レポートの中でも特にご活用いただく機会が多い人気テーマのひとつです。
各社の販売動向はもちろん、新規獲得や継続率向上、ファン育成につながる施策まで、実務に役立つ内容を幅広く整理しています。今回は、毎号取り上げているファンケルやオルビスといった主要企業に加えて、Aiロボティクス、はぐくみプラス、Hameeなど、成長著しい新興企業の取り組みも新たに分析しております。市場全体の潮流の把握から、将来戦略の立案まで、通販化粧品ビジネスに携わる皆さまに多角的にご利用いただけます。
本レポートは、平日3日間の無料試読が可能ですので、少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご試読いただければと思います!

 

―本日は貴重なお話をありがとうございました。
さて、今回インタビューした「2025年 通販化粧品の市場分析調査」レポートは絶賛発売中です。
ご興味がございましたら是非とも弊社にお問い合わせくださいませ。

 

 

『2025年 通販化粧品の市場分析調査

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